7/4(日)。
講談社の「借りぐらしのアリエッティ」試写会に当選したので、行ってきました。
私は原作を知らないので、その前提での感想です。
たとえば、それは視点だったり、聞こえてくる音だったり、まわりで起こる自然現象だったり。
人間にはたいした音に聞こえなくても、小人にはものすごい音に聞こえたり、小人の使う食器だと水の表面張力がかなり大きな力となっていたりというのを丁寧に描いていた。そこまでこだわらなくても、アニメなので見てるほうはさほど気にしないのだけれど、この作品では、あえてそこまで細かく描写することで、こだわりを持って作っているという作り手の思惑というか、そういうのを感じとることができた。これは見てて、なかなか良かったなぁ、と。
ただ、その割りに、どうも小人の大きさというのが、イマイチわかりづらいというか。見慣れないものを見たときの大きさの把握ってのは、別のよく見るものとの比較で認識するしかないんだけど、この作品は小物の大きさが作品ならではみたいな感じで、シーンによって小人が大きく感じたり、小さく感じたりというのがあって、違和感があった。おそらく作品中では小人の大きさそのものは変わってないはずなんだよね、これ。アリエッティの髪留めに使ってる洗濯ばさみみたいなやつが、やたら小さくて、あれが一番悪さしてるような感じがする。
物語のほうは1時間半の中篇ということもあって、ヤマは基本的に1つだけ。全体的な雰囲気は、以前のジブリな雰囲気ではあり、脳裏をよぎったのは、耳をすませばとか猫の恩返しあたりかな、と。物語の作りはとても丁寧で、序盤で小人の存在や借り暮らしのあり方などがきちんと描かれて、見ている人を作品に引き込んでくれる。その後ちょっとしたハプニングを経て、人間と小人のギャップというのかな、思いのすれ違いみたいなものを描きつつ、山場へと向かっていく。
もう1つ特徴的なことと言えば、人間のショウの物言いだろうか。
小人に対して、直接的に死や滅びの言葉を突きつける。これ、ジブリ作品としては結構異例な気がする。最初、このシーンを見たときは、ジブリでこういうのアリなの? と思ってしまった。死や滅びというものを作品上で表現することはあっても、登場人物にそれを肯定するというか、生きることとは逆の方向性を持った思考というのはあまり無かったように思う。それがこの作品にはあった。もっとも、この作品を見ていくにつれ、ショウのそういう発言の原因がわかるわけで、その瞬間に「なるほど」と思わさせられるわけです。
ショウが自分の置かれている立場を小人にも照らし合わせてしまってる。でも、小人たちは自分の置かれている立場をそのまま受け入れようとはせず抗おうとしている。それを見たショウは、負の方向に行っていた自分の考え方を修正していく。まぁ、典型的と言ってしまえば典型的な展開ではあるのでしょうけど、1時間半の中で表現するには十分なのではないか、と。
この作品で問題があるとすると、山場へ向かっていくときの盛り上げ方だろうか。どうも盛り上がりが少なかったんだよねぇ。だから、見終わったときに感じるのは良くも悪くも満足感はあるけど、満腹感は無いという感じ。盛り上げ方が足らないので、見てるほうからすると、まだ何かあるのかな?という気持ちにさせてしまいかねない。もし、この作品を見て「あれ?終わり?」と思ってしまうなら、たぶんそれはこの作品の弱点じゃないかと思う。
こうやって書いてみると、どうも本筋とはちょっとズレたところで楽しんでしまったような気がする。