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ツッコミ日記 Encylopedia


[綴文] 希望の神様 [長年日記]

2007年10月10日 00:11更新

題目「希望の神様」

むかしむかし、あるところに、とても貧しい村がありました。

その村は荒れた土地を開拓してできた村で、畑の土も痩せこけていて、作物を育ててもなかなかよい実をつけず、村人たちは大変な苦労を強いられていました。その年は天候も芳しくなくいつもの年よりも土地が荒れ、流行り病もあったことから、“周辺の村では村人が全員死んだ”、そんなよくないうわさが流れてくるほどでした。

そんなある日、その村に神様がやってきました。神様はこういいました。

「私は希望の神です。あなたがたの望みを、なんでも、いくらでもかなえてあげましょう」

村人は、突然あらわれた神と名乗る人物に不信感をおぼえ、誰も相手にしませんでした。

そこへ町外れに住む若い男がやってきて、神様にこう言いました。

「うちはいまにも倒れそうなボロ家です。立派なお屋敷にしてくれませんか?」

神様がその若い男についていくと、そこには少し傾いて、壁にもいくつか穴のある、強い風が吹くと吹き飛びそうなおんぼろな家がありました。神様はその家の前に立つと、持っていた杖をかかげ、軽く振りました。すると杖の先から光があふれだし、あふれた光がボロ家を包み込みました。するとどうでしょう。いまにも倒れそうだったボロ家が、たいそう立派な屋敷になっているではありませんか。若い男は喜び、神様にお礼をいいました。

「ありがとうございます、ありがとうございます」

すると今度は、一部始終を見ていた村人たちが集まってきて、自分の望みを言い出しました。神様はその望みを1つ1つかなえてあげていきました。村人たちはとても喜び、神様に拝む者もいました。それから毎日、村人は神様に望みをかなえてもらうようになりました。はじめのころは、雨が続けば雨をやますよう、日照りが続けば雨を降らすよう、そんな望みを叶えてもらいながら村人たちが耕していた畑はだんだんと豊かな実をつけていくようになりました。しかし次第に働くよりも、神様から食べ物やお金をもらったほうが楽だということに気づくようになり、村人たちは働かなくなっていきました。働かなくてもいいのなら、もっと贅沢をすればいい、そう思って神様に贅沢の限りを望むのでした。

神様にあらゆる望みをかなえてもらった村人たちは、だんだんと神様に望みをかなえてもらうことをしなくなりました。すでに莫大な富を得ていたので、何をするにも不自由はなかったのです。神様はある日、村人に聞きました。

「望むことはありませんか?」

すると、村人たちはこう言いました。

「もう私達には望むものはありません。すべて神様に与えてもらいました。今度は別の村で、望みをかなえてあげてください」

神様はもう一度聞きました。

「本当に望みはないのですか?」

村人たちはにっこりと笑い、神様を拝むように言いました。

「はい。いままでありがとうございました。」

神様は

「そうですか……では…」

そうつぶやくと、手に持っていた杖を掲げ、杖を軽く振りました。杖の先から光があふれだし、あふれた光が村人たちを包み込みました。すると、村人たちがどんどん倒れていったのです。最後に倒れかけた村人が言いました。

「な、なぜこのようなことをなさるのですか……」

神様は答えました。

「あなたがたはもう望みはないと言いました。生きる望みを失ったあなた方のために、私はあなた方に死を与えました。これが私が最後にかなえてあげられることです」

そう言うと、神様はその村を立ち去りました。

数日後、神様は別の村にいました。神様は村人にこう言いました。

「私は希望の神です。あなたがたの望みを、なんでも、いくらでもかなえてあげましょう」

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