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ツッコミ日記 Encylopedia


[マンガ] 週刊少年ジャンプ黄金期の打ち切り率は本当に多いのか [長年日記]

2008年11月18日 01:20更新

週刊少年ジャンプ黄金期の打ち切り率は本当に多いのか

週刊少年ジャンプ 2008年42号(9/13発売)より新連載されたマンガ「チャゲチャ」(作者:澤井啓夫)。同49号(11/1発売)にて8話で連載が終わるという見事なまでの打ち切りっぷりを見せてくれた。全8話というのは稀に見る短さで、おそらく短期集中連載や他誌で再開したものを除けばジャンプ史上最短の部類に入ると思われる。通常、ページ数の多いストーリー系作品でさえ打ち切りは9話だというのに、ギャグマンガで8話打ち切りはよほど人気がなかったのだろうか。

そもそもチャゲチャは第1話から作品のノリが前作「ボボボーボ・ボーボボ」の末期と同じような感じで、一度終わったものをまた見せられている感が強い。もともと勢いで畳み掛ける系のギャグマンガなので、マンネリなネタが続けば、単に絵が濃くて無茶苦茶やってるだけのマンガになってしまう。まるで味付けしてない脂っこい料理を食べているようなもの。これが受けるなら、そもそもボーボボが終わるわけもなく、このままの状態が続けば遅かれ早かれチャゲチャは打ち切りになるのではないかと思っていたが、まさか8話とは。

アンケートの結果次第で掲載順序も連載終了かどうかも決まってしまう週刊少年ジャンプにおいて、打ち切られる作品が発生するのは毎度のことである。人気の無い作品を消し、新たに新連載を投入する。そうやって人気作品を掘り起こして、かつては653万部というとんでもない発行部数を樹立したほどであった。ただしこの手法、当然ながら容赦ない。かつて人気を我が物とし栄華を極めた作品でさえも、人気にかげりがあれば容赦なく打ち切られたくらいである (たとえば、聖闘士星矢は話の途中で打ち切られて最終話を他誌に掲載。魁!!男塾も話の途中で無理やり切り上げて最終話に向かってまとめた)。新連載の作品も、はじめの2〜3週で人気が取れなければ即刻打ち切りが決まってしまうらしい。話を積み重ねれば面白くなるような作品だろうがなんだろうがズバズバ切る。強靭な連載陣の中で人気を確保するのは並大抵ではなく、努力もむなしく消えていった作品は多い。

……そういえば、本当に、多いのか?

なんてことを、ふと思ってしまったのが良かったのか悪かったのか。サクっと終わるつもりだった日記がこんなに長文になるとは思わなかった。

現在の連載陣

そんなわけで、まずは2008/11/05現在連載中の作品を連載開始順に並べてみた。

#巻数連載開始作品名
(01)[162]1976年42号 こちら葛飾区亀有公園前派出所
(02)[052]1997年34号 ONE PIECE
(03)[026]1998年14号 HUNTER×HUNTER
(04)[044]1999年43号 NARUTO
(05)[015]2000年38号 ピューと吹く! ジャガー
(06)[036]2001年36・37号BLEACH
(07)[032]2002年34号 アイシールド21
(08)[026]2004年02号 銀魂
(09)[022]2004年26号 家庭教師ヒットマンREBORN!
(10)[017]2004年27号 D.Gray-man
(11)[019]2005年12号 魔人探偵脳噛ネウロ
(12)[011]2006年21・22号To LOVEる
(13)[005]2007年33号 SKET DANCE
(14)[003]2008年01号 PSYREN
(15)[002]2008年15号 ぬらりひょんの孫
(16)[003]2008年16号 バリハケン
(17)[002]2008年25号 トリコ
(18)[000]2008年37・38号バクマン。
(19)[000]2008年39号 いぬまるだしっ
(20)[000]2008年43号 アスクレピオス

巻数は2008/12/4現在の単行本。ちなみに単行本は平均10話収録となるので年5冊くらい発行される。くれぐれも、HUNTER×HUNTERには突っ込まないように。みんなわかってるから。

なお、番外として、他誌に移籍した作品も載せておく。

[096] 1987年01・02号 ジョジョの奇妙な冒険

[025] 1988年14号 BASTARD!! -暗黒の破壊神-

[007] 2005年44号 べしゃり暮らし

[]内は単行本。ジョジョは現在連載中のスティール・ボール・ランを含めた通巻である。

これを見ると、なんだかんだでその年を代表するかのようになんらかの作品が継続している。アンケート結果というサバイバルを生き残った精鋭たちであるとも言えるが、作品的に円満終了したものもあるので一概には言えない。こうして何か作品を残しておかないと、何らかの人気作品が円満終了した際に看板や中堅を担う作品が無くなってしまうというのもあるのだろう。ここでちょっと妙な点に気づくのが、2003年の作品が無いということと、2004年の作品が多いということ。いったい何が起きたのか、それは後述する。

各年ごとの傾向

まず、ジャンプ黄金期について説明しておく。ジャンプ黄金期とは、発行部数が上昇を続け最終的に653万部に至った1980年代後半から1990年代中盤までを指す。このころは長期に渡り人気を支える作品に恵まれ、そういった作品が終了してもまた新たな人気作品が生まれていた時代だった。以降は黄金期を支えた人気作品の相次ぐ連載終了と、それにかわって人気を支え続ける作品確保がままならなかったことから部数は減少の一途を辿り一時は、いわゆる暗黒期を迎えることになる。

実際に各年ごとの新連載作品に対する終了状況を見てみる。

週刊少年ジャンプ 連載終了率表

週刊少年ジャンプ 連載終了率グラフ

この表は、各年に発表された新連載作品数と、終了までの週数を概算でまとめたものである。10週と書かれているところは、だいたい10週前後で終わったもの、という感じでとらえて欲しい。あくまで概算なので微妙にあれなところもあるが、大きな目で見ればきっとそう間違いではない。

なお、集計には含めたが、10週や20週の中には打ち切り以外にも短期集中連載(※1)や、名称変更・連載復活・掲載誌移動などの特殊例(※2)がある。

※1 たとえば、94年の10週のうち1本はキャプテン翼、97年の20週のうち1本と98年の10週のうち1本、2000年の20週のうち1本は鳥山明、など。

※2 たとえば、91年20週のうち1本は「燃えるお兄さん2」、98年の15週は「ライジングインパクト」、2004年の40週は「スティール・ボール・ラン」、2005年の25週と2006年の10週は「タカヤ」であり、単純に集計するのはどうかとも考えられるが、ジャンプ本誌的には終わったことには変わりないので。

1976年から33年分の平均では、20週前後までに終了する作品は全体のおよそ6割、1年未満で終了する作品は全体の7割となっている。

20週前後までに終了する率は年により上下変動があるものの全体的には比較的平均値に近いところにある。また、1年未満で終了する率は若干ではあるが減少傾向が見られる。黄金期といえどそれらは変わらない。打ち切りが多いというのは、

・内容が良くても打ち切られてしまうこと

→ つまらない作品であれば読者は終わって当たり前と思うし作品自体気にしない。少しでも面白ければ打ち切られれば残念に思うし、人気作家の新連載も切られてしまうので印象に残りやすい。

・1年を超える長期連載が増加傾向にあること

→ 早期に終わる作品の連載期間が相対的に短く感じてしまう

・近年は早期に終了する作品が減少していること

→ 相対的に昔のほうが早期に作品が終わっていたと感じてしまう

こういったことから来るのが原因ではないかと思われる。

さて、グラフ見ると特異点が見られる。

・1989年の終了率が高く、翌90年の終了率が低い

・2003年の終了率が高く、翌2004年の終了率が低い

88年くらいまで1年未満終了率が減少傾向にあり中長期連載作品が増えてきたが、89年は20週〜1年くらいの作品が急に増えている。当時連載されていた人気作品は、

・ドラゴンボール

・魁!!男塾

・シティーハンター

・ついでにとんちんかん (1989終了)

・ザ・モモタロウ (1989終了)

・ぼくはしたたかくん (1990終了)

・ジャングルの王者ターちゃん

・神様はサウスポー (1990終了)

・県立海空高校野球部員山下たろーくん (1990終了)

・聖闘士星矢 (1990終了)

・燃える!お兄さん

・まじかるたるるーとくん

・こち亀

・ろくでなしブルース

・ジョジョの奇妙な冒険

このような状況で、人気を確保するのは難しかったのだろうか、この年に発表された作品では「ダイの大冒険」「電影少女」の2作品が1年以上の連載を行うことになる。ちょうどこの年に終わった2作品と入れ替わる形である。この年の新連載は長続きはしなかったものの、小粒でピリリな作品があり、小畑健や冨樫義博、井上雄彦、岡野剛などの後に一線で活躍することになるメンバーや、次原隆二、ゆでたまごなどのかつて一線にいた人などがひしめきあっていた。翌年、中堅にいた作品が4本も終了するのだが、偶然にもそれらに変わる作品が出現することになる。90年は「花の慶次 -雲のかなたに-」「SLAM DUNK」「幽☆遊☆白書」と後の人気作となる作品が連載開始され、奇しくもうち2作品は前年の惨敗を払拭する形となった。1年以上の連載もいくつかあり、90年は豊作となる。

2003年はここ30年で見ても稀に見る不作の年だった。この年新連載だった11作品中、9本が20週までに終わる見事なまでの打ち切りっぷりで、残った「ごっちゃんです」は1年を越えられず、唯一「武装錬金」だけが生き延びた。ちなみにこの年、1月に編集長だった高橋俊昌が亡くなり、茨木政彦に変わっているのだが、それによる影響なのかどうかはわからない。ただ面白いのは、90年がそうだったように翌2004年は2003年の惨敗に反発するかのように打ち切り作品が減少し、1年を超える連載作品が多発した。まず「DEATH NOTE」にはじまり、「銀魂」「家庭教師ヒットマンREBORN」「D.Gray-man」「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」。従来とはかなり路線の異なる作品が増えたように思う。

共通しているのは、それまでの状況から急に不作の年が発生し、その翌年に豊作となっている点。もしかしたら今後、同じようなことが起こるかもしれない。

最後にちょこっと黄金期の終焉について。

653万部を達成した1995年初頭時点での1年以上の連載期間があった人気作品はこんな感じ。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」

「影武者徳川家康」(1995終了)

「新ジャングルの王者ターちゃん」(1995終了)

「ドラゴンボール」(1995終了)

「ボンボン坂高校演劇部」(1995終了)

「SLAM DUNK」(1996終了)

「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(1996終了)

「王様はロバ」(1996終了)

「ろくでなしブルース」(1997終了)

「とってもラッキーマン」(1997終了)

「キャプテン翼 ワールドユース編」(1997終了)

「みとりのマキバオー」(1997終了)

「BOY」(1999終了)

「ジョジョの奇妙な冒険」

「地獄先生ぬーべー」(1999終了)

「るろうに剣心」(1999終了)

人気を支えていた作品が直後から終了しだす。入れ替わるように新連載の中から1年を越える人気作品は出だすのだが、困ったことにドラゴンボール並に売上を支えるだけの看板作品が出現せず、中堅クラスに踏みとどまる……とか書いたところで周知の事実なのでこれにて日記終了。

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